事例紹介

黒字のはずが決算では赤字になる不思議

2018-05-31

「赤字の仕事は受け付けていないはずなのに、決算をしめて出てくる数字が赤字。粗利が赤字なんです。 」

内装業を営むKさんは、プロジェクト単位では絶対に黒字のはずが、決算で赤字になる理由がわからず困ってらっしゃいました。
設立時からお世話になっている会計事務所に確認をしても「適切に処理してます」の一点張り。会計が分かる人に一緒に話を聞いてもらいたいというのがご相談でした。言うなれば、会計にまつわるセカンドオピニオンを求められて形です。

工事進行基準と工事完成基準

早速ミーティングに立会いましたが、「なぜ赤字になるのですか?」という質問に対してはこれまで同様、明快な回答はありませんでした。きちんと会計処理しているか確認しますという話で終わってしまいます。

そこで、会計処理はどのような基準で行なっているか確認をしてみました。すると
「工事進行基準を使っています。」
という話でした。これに、会計士として疑問を感じました。

まず、工事進行基準について簡単に説明します。
建設の現場では何年もかかる大きなプロジェクトは少なくありません。全てが終わってから売上と費用を計上するのではその間の収益が確認できないため、実態を適切に反映できません。そこで年度で区切って、その進捗に応じて売上や費用を計上するのが工事進行基準です。

ただ、これが必要なのは橋やビルを作るような、工期が1年を超える場合に適用するものです。お客様のビジネスは内装業ですから、これには当てはまらないのでは?と思ったのです。案の定、Kさんにプロジェクトの工期はどれくらいですか?と聞くと長くて3ヶ月という回答でした。ならば工事進行基準ではなく、工事が完了したタイミングで計上する工事完成基準を採用すれば、実態に近く、進捗率を把握する工程も不要になると考えました。

検証と実態解明

Kさんの会社のタイ人マネージャーさんと、会計基準を変更しても大丈夫かどうかを確認。タイの法律や税法を改めてチェックし、また他の会計士ともディスカッションして仮説を検証していきました。

その過程で会計上の誤りも発覚し、赤字の根本原因も分かりました。工事進行基準を適用する際、費用だけが計上され、売上が計上されていませんでした。

Kさんに一連の調査結果をご説明し、工事完成基準を採用して弊社で会計業務を引き継ぐことになりました。

もうひとつの課題

一件落着!に思われましたが、調査の過程でもう一点、あることに気づきました。
それはKさんの会社内では、プロジェクト単位での損益がきちんと管理されていないということです。そもそもプロジェクト単位でしっかりと損益が見えていれば、決算の赤字がおかしい理由にもっと早く気づけたはずです。

そこで、プロジェクトを管理しているシートのフォーマットを確認させていただきました。
すぐに計上するタイミングに問題があることが分かりました。それまでは支払いのタイミング、入金のタイミングで、数値を入力し、売上、費用を管理していました。それを、請求書をもらう、または発行するタイミングで数値を入力するように統一しました。理由は現金主義でなく、発生主義が会計の基本だからです。こうすることで、プロジェクト管理シートの数字と、帳簿の整合性が取れるようになります。

帳簿と管理シートの繋がりを確認できるようになると、お客様ご自身でもその数字の意味、内容を理解し、確認が出来るようになります。そうなれば、意思決定も迅速かつ正確になります。

会計は、会計基準に無理やりビジネスを当てはめるのではなく、実態のビジネスに基づいたものであるべきなのです。

会計上の課題は、会社によって異なります。
まずはご相談も承りますので、会計のセカンドオピニオンとしてもご利用ください。
J-Crownの主なサービスや料金のめやすは、サービスメニューからどうぞ。

アクセスMAP

所在地
48/7 Soi Napha Sap 4, Khlong Tan sub-district,
Khlong Toei district, Bangkok 10110
タクシーでお越しの方
BTSトンロー駅下車 2番出口 (エレベーターで降りるのが一番近いです)
バイクタクシーは15バーツ、行き先は「ソイ ナパサップ5」
徒歩は15分くらいかかります。